小暑
First Dish鱧、いろいろ
鱧、いろいろ
梅雨の最中、ときおり日差しが濃い影を落とすようになると、京都は夏を告げるお囃子の音に包まれます。四季折々の美しさで多くの人を魅了しているこの街ですが、とりわけ夏は食の魅力が多彩です。「梅雨の水を飲んで育つ」と言われる鱧(はも)は、そのシンボルともいえる食材。京の台所「錦市場」で100年以上の歴史を誇る鮮魚店「丸弥太(まるやた)」さんに「THE HIRAMATSU 京都」の料理人たちとお邪魔しました。
素材の良さを引き立てる
一期一会の料理
京都の夏の風物詩といえる鱧。「割烹 いずみ」とイタリア料理の「リストランテ ラ・ルーチェ」 ではどのような料理に仕立てるのでしょうか。
「旬の鱧に走りの冬瓜を合わせて、日本料理らしい技で素材の味を活かしたい」とは、いずみの料理長、若松 裕樹。夏の疲れをやさしく癒す一品に期待が高まります。一方、ラ・ルーチェの料理長、筒井 崇海は「大阪時代には天神祭で鱧を出していたので、関西の夏を感じる一皿をつくりたい」と、活きの良い食材に目を輝かせていました。夏にぴったりの趣向を凝らした、それぞれの一品をご紹介します。
上から「良い素材は店の奥にある」と西川さん。/職人の見事な包丁さばきに見惚れる/伊藤若冲を生んだ京の台所は400年の賑わい。/鱧とあわせる食材について相談する顔も真剣。
ひとさらの文脈
京都は、祇園祭の熱気に沸き立っていました。食材の源流としてひらまつの料理人たちと西川代表にお話を伺えたのは貴重な体験でした。活気ある店内を奥へ進むと、坪庭を挟んだ母屋の二階に小振りな座敷があり、脈々と続く京都の日常を垣間見た気がします。
やさしい椀に仕立てた「いずみ」と、アクアパッツァに和の伝統技法を融合させた「ラ・ルーチェ」の料理は、それぞれ「THE HIRAMATSU 京都」らしいアイデアに満ちていました。春に生まれ、梅雨の水で育ち、生命力に満ちた鱧をいただく喜び。「鱧も一期 蝦(えび)も一期」といいますが、できることなら旬を味わう人生でありたいものです。
この季節にしか出会えない、一期一会の一皿と京都の夏をお楽しみください。
読むひらまつ。編集部 飯田健太郎