秋分
Second Dish秋、丹波のテロワール
秋、丹波のテロワール
厳しい夏の暑さも落ち着き空が高くなってくると、どこからともなく風が秋の気配を運んできます。野山が季節の恵みをたっぷりと蓄え、葉が少しずつ色づいてくると紅葉はすぐそこ。収穫期は農家や生産者のみなさんはもちろん、料理人の心もはやるものです。2022年10月初旬、収穫で活気づく丹波の生産者さんを求めて、京都の料理に特化した食材のプラットフォーム「株式会社ミナト」主催のツアーに参加させて頂きました。「THE HIRAMATSU 京都」の料理人たちが受け取った季節の恵みは、どんな一皿になるのでしょうか。
実りを祝ういのちの収穫祭
今回のツアーでは「丹波農園」の他に、安心で安全なジビエの肉を専門に扱う「鹿肉のかきうち」、京都の食文化に合うワインを作っている「丹波ワイン」など、土地の恵みを扱う生産者のみなさんにもお話を伺うことができました。ツアーの最後に催された収穫祭では、「THE HIRAMATSU 京都」の料理人たちもその恵みを堪能したようです。
「割烹 いずみ」料理長、若松 祐樹は「自然のなかで一緒にテーブルを囲みながら、生産者の方と直接お話できたのが良かったです。『丹波くり』の大きさにもビックリしましたが、『丹波ワイン』の『てぐみ 白』という微発泡のワインが日本料理に合うと思いました」と、新しい発見があったようです。「ひとつの毬(いが)に3つも栗が入っているなんて初めて知りました。それも一粒がとても大きいので、あの迫力をデザートに盛り込みたいですね。」とは、「リストランテ ラ・ルーチェ」のシェフパティシエ、八田 栄治。さっそく、盛り付け用に大きな栗を抱えていました。一方、料理長、筒井 崇海は「栗の味を引き出す榊原さんの技と情熱に感心しました。それから『鹿肉のかきうち』で見た鹿も、いのちの尊さと美しさに改めて気付かせてくれました。豊かな土地と生産者に恵まれていることを実感し、料理人として身が引き締まります」と、思いを新たにしたようです。それぞれが受け取った恵みのバトンは、収穫の喜びを感じる一皿になりました。
上から「鹿肉のかきうち」でジビエの鹿肉について教えてくれた前田 侑記子さん。/日本で唯一、樹齢35年のピノ・ノワールなどが育つ「丹波ワイン」。/葡萄畑で創業からの挑戦について話す黒井 衛住さん。/試飲で料理とのペアリングをイメージする。
ひとさらの文脈
今回ツアーに同行し、「株式会社ミナト」のみなさんが一生懸命に生産者の魅力を伝えているのが印象的でした。湊 浩さんは「創業者は物がなかった時代に必要なものを不足なく揃えようと頑張った。でも、いまはなんでも手軽に手に入る時代だからこそ、良い生産者を見つけて良い料理人に繋げることが自分たちの仕事」と、胸を張ります。
こうして命に向き合うそれぞれの想いがひとつの料理として結実する。まさに、命が循環する食の本質に迫る体験となりました。旬の食材と料理人の出会いは一期一会の世界。生産者はその年で最高の食材を、料理人はその年にベストな一皿を生み出し、お客さまのテーブルへお届けしています。
読むひらまつ。編集部 飯田健太郎