Second Dish夏は甘く、贅沢に。
夏は甘く、贅沢に。
日本版 「ゴ・エ・ミヨ 2023」にも掲載された「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座」。太陽がひときわ影を濃くする夏には、沖縄全土の果樹園からたくさんの果物が集まってきます。この時期ばかりは、爽やかなアシェット・デセール(皿盛りのデザート)がディナーのフィナーレを飾ります。夏の主役といえば果物の女王「マンゴー」。太陽の光を燦々と浴びたフルーツをふんだんに使って一皿に仕立てるのが、パティシエの新垣 日向子。グランメゾンにおけるデセールの魅力と楽しみ方について、総料理長を務める木下 喜信シェフと語ってもらいました。
パティシエはもう一人の料理人
「自分も修業時代にパティシエを経験したことがあります」と話す木下は、グランメゾンにおけるパティシエの役割について“もう一人の料理人”だと言います。レストランパティシエはコースの内容をシェフと相談しながら、メインの食材や料理の雰囲気に合わせてフィナーレに相応しいひと皿を仕立てていきます。アシェット・デセールはケーキやアントルメなど単体でも成立するスイーツとは違い、その日のディナーを締めくくる最後のひと皿として重要な役割を担います。メインデッシュの後にテーブルをきれいに片付けてから、再びカトラリーをセットして提供されるのはそのため。食事の後に頂く“特別なひと皿”であることのメッセージでもあるのです。とりわけ、夏の沖縄はパイナップルやパッションフルーツなど、鮮やかな果物が次々と旬を迎えるシーズン。新垣は「シェフとの対話の中で、新たな発見や気付きを得るのが楽しい」と、仕事の魅力について話します。
農園にて「今年もマンゴーの季節が来た」と、真剣に視察する総料理長の木下(左)とパティシエの新垣(右)。/木陰に入ると気温が下がり、風が心地よい。/「夏はフルーツの種類が多いので、メニューを考えるのが楽しい」
沖縄のマンゴーは太陽の味がする
この時期に旬を迎えるのが果物の女王と呼ばれる「マンゴー」です。日本の生産量の約50%を担う沖縄県では、「アップルマンゴー」として知られるアーウィン種や、大きな実が特徴的な「キーツマンゴー」、台湾原産の「金煌(キンコウ)マンゴー」など、多様な品種が育てられています。なかでも、沖縄でしか生産されない品種が「夏小紅(なつこべに)」と「金蜜(きんみつ)マンゴー」。「夏小紅」は2021年ごろに発表された新しい品種で、繊維や酸味が少なく、糖度が非常に高いため凍らせるとシャーベットのように食べることができます。いっぽう、「金蜜マンゴー」は台湾原産の高級品で「幻のマンゴー」といわれています。まだ沖縄でも生産量が少なく、濃厚な蜜のような甘みが人気です。6月中旬からアーウィン種の収穫がはじまり、7月から夏小紅、次いでキーツと、次々旬を迎える沖縄マンゴー。「沖縄のマンゴーはしっかりと太陽の光を浴びているので、追熟することでぐっと甘みと香りが増します。果物の旬を感じる喜びは、夏の沖縄特有の贅沢だと思います」と、スイーツが大好きな新垣は目を輝かせます。
立派なマンゴーに思わず笑みがこぼれる。/マンゴーは葉の上に実を付けるため、日焼けと落下を防止するためにひとつひとつ丁寧に袋に包まれている。/宜野座はいま、夏真っ盛りだ。/たわわに実ったマンゴーは、いまにもこぼれ落ちそう。
ひとさらの文脈
デセールという言葉にはデザートという意味だけでなく、「食事を片付ける」という意味もあります。メイン料理を終えてからアヴァンデセール、グランデセール、ミニャルディーズとコースで提供されることも多く、料理とは別の楽しみとして扱われているのがよくわかります。また、テイクアウトすることを前提に作られるパティスリーと違い、作りたてのフレッシュな味わいを楽しめるのも魅力です。パティシエは、シェフにとってもコースのフィナーレを任せる大切な存在。二人の真剣なやりとりを聞いていると、ゲストを楽しませるために心血を注いでいるのがよく伝わります。シェフに今回のひと皿について伺うと「料理からの流れも良く、新垣らしさが出ているひと皿になった」と太鼓判。心地よい風と美味しい食事は、夏を彩る甘美なひとときです。
※記事中の料理は取材時のもので、天候や仕入れの状況により予告なく変更することがございます。
読むひらまつ。編集部 飯田健太郎